2012年5月28日月曜日

シニアが社会に役立つために。

NPOは、定年後の経験豊富なシニアの力をかりたいと思っているが、その一方で、不安も大きい。
そんなデータがありましたので、ご紹介します。
少し古いデータになりますが「シニア世代活用」に関するアンケート調査です。
(データ引用:2009.3「再チャレンジのきっかけとしてのNPO雇用状況アンケート調査報告」 再チャレンジ学習支援協議会)

経験豊富なシニアへの、期待と不安。

「定年退職後のシニア」を求めているNPOは78%。
多くのNPOがシニアの力を活用したいと考えています。

具体的に力を貸してほしいと考えている事項としては、以下のようなものがあります。
  • 前職のスキル
  • 人脈
  • 組織運にすぐれた点を生かす

しかし、実際の受け入れは、不安。 

ニーズはあっても、実際にシニアを受け入れることには、失敗経験を含め、いくつかの不安があるようです。


上位にあげられているのは、表現こそ違えど、同じような指摘です。それは、「ビジネス分野でのキャリアや成功体験があるからこそ、そこからの意識転換が出来ず、新しい組織への理解や柔軟性が求めにくいのではないか」、という不安です。


意識を変えれば、第二の人生が充実する。

NPOだけではありません。先日お話を聞いた、キャリアシニアを専門に扱う人材派遣会社でも、同じような課題に直面していて、最初は「仕事があるだ けでもありがたい」「何でも、やります」と言っていたシニアが、徐々に給与条件や労働条件での不平をもらすようになることが多いのが悩みなのだそうです。

アメリカなどでは、重役まで行った人が、リタイア後、警備員や駐車場係などの仕事を始めた場合には、陽気に楽しく働いて人気者になったりもするそうで、それはおそらく「ここからは、次のフェースだという切り替えがはっきりしている」のではないかということでした。

また、いまは、年金支給年齢との兼ね合いで、定年延長や再雇用が企業に義務付けられるようになりましたが、そこでも、肩書きを失ったり給与が下がっ たりすることにより、モチベーションが低下することが、ひとつの問題としてあげられ、企業の人事部の課題になりつつあるそうです。

あまりにも長くひとつの会社にいると、知らず知らずのうちに、ひとつの価値観や成功体験に縛られ、そのことさえ自覚できなくなりがちです。早く、そこから抜け出して、次の価値観を見つけることが、まずは、より有意義なセカンドライフへの第一歩ではないでしょうか。

2012年5月7日月曜日

20代の3割近くが「自殺を考えた」–内閣府調査結果に思う。

内閣府が、「自殺対策に関する意識調査」の結果を発表しました。
それによると、「今までに本気で自殺したいと思ったことがあるか」と聞いたところ、「ある」と答えた人は全体で23.4%。08年の調査に比べて4.3ポイント増加しています。
特に20代の3割近くが、考えた頃があるという点が、クローズアップされていました。

国民の4人に1人が、本気で自殺を考えたことがある。

昨年の自殺者数は、自殺リスクが高いとされる中高年が前年より減った一方、20代以下 では増えており、今回、20代の若者のうち本気で自殺を考えたことのある割り合いが28・4パーセントに上りました。

20代28.4%
30代25.0%
40代27.3%
50代25.7%
60代20.4%
70代以上15.7%
全体23.4%

時系列でみても、20代の伸びが目立ったこと。また、悩みを打ち明ける相談相手がいるかどうかをたずねた質問で、「いる」という人の割合が、20歳代男性が最も低く87.6%だったこと。「考えたことがある」という回答者のうち、20代では36・2%が「1年以内に」と答え、15・2〜25・3%だった他の世代を大きく引き離したことなどが、より若い層に注目が集まる要因になったのかもしれません。内閣府は「若者に絞り、雇用改善もまじえた対策が急務」と話しています。

しかし、若い層が、何を原因に自殺を考えたのかについては、分析されていません。そこが重要なのではないかという気がします。また、数字を見れば、これは世代をこえた問題で、「国民の4人に1人が、本気で自殺を考えたことがある」というのは、若い層に限らず大きな数字だと思います。

ゲートキーパーの大切さ

最近の自殺対策のキーワードとして、「ゲートキーパー」があります。これは、自殺対策の分野では広く使われてきた用語だそうです。

 ゲートキーパーは「門番」。悩み苦しんでいる人に気づき、声をかけ、話を聞き、必要な支援につなげる人という意味で使われているようです。また、弁護士、民生委員、医師などの専門家だけでなく、国民全員が「ゲートキーパー」の役割を果たせるように・・・という意図で「ベーシック」という言葉をつけて「ゲートキーパー・ベーシック」などとも言われるようです。みんなが気づき合えるようになろうということでしょうか。

1月には、政府が、自殺対策強化月間の標語を「あなたもGKB47宣言!」としたことに批判が続出して、ついに撤回した事件がありました。あのGKBも、ゲートキーパーベーシックの略語でした。
キャッチフレーズは、結局、「あなたもゲートキーパー宣言!」と修正されたようですが、私は、それでは、「あなたもGKB47宣言!」と変わらないのではないかと感じました。

自殺を考える人は、何らかの深刻な問題を抱えているはずです。そんな人に対して声をかけ、話をきくというのは、並大抵のことではありません。それなのに、 「まずは、言葉への認知度が高まれば、それだけで認識が高まる」とでもいうような広告的な発想が感じられて、違和感を感じます。そんなに簡単なテーマではないだろう・・・と。

プロモーションサイトも開設されていましたが、これにも違和感を感じました。
タレントを使ったのは、このテーマを身近に感じさせるためなのかもしれませんが、タレントのメッセージよりも、信頼できる相談窓口やNPOを紹介したり、具体的に問題解決をしてくれるサービスについて説明するなど、死にたいとまで悩む人たちの問題解決につながる具体的な情報を集めたサイトの方が、よほど有用ではないかと感じました。
(追記:サイトは、すでに終了)

自殺対策に取り組むNPOや、個人としてゲートキーパーとしての活動をしている人がいます。「あなたもゲートキーパー宣言!」という軽さや、プロ モーションサイトの内容は、そんな人たちの活動をバックアップするどころか、結果として逆に作用しているような気がしてなりません。
今回の調査結果を受けて、もう少し真剣に考えるべきではないかと、あらためて思いました。

<リンク>
平成23年度自殺対策に関する意識調査
内閣府自殺対策推進室

(参考)本件に関する情報集 NAVERまとめ
http://matome.naver.jp/odai/2133592255773215301